John Robichaud/Olero Surfboardsを迎える理由と、日本のサーフボード製作が抱える「空白」

10月、イギリスから Olero surfboardsのJohn Robichaud(ジョン・ロビショー)がゲストシェーパーとして、ここ九州・福岡は糸島のファクトリーにやってきます。

今回のコラボレーションでは、Johnがシェープ(削り)を行い、僕がそのボードのグラッシング(仕上げ)を担当するという形で共同製作を行います。

サーフボードといえばアメリカやオーストラリアの印象が強いため、今回の来日も「僕自身が狙ってイギリスを選んだ」というわけではありません。たまたま巡ってきたお話しがイギリスのビルダーでした。

ですが、このお話をいただいたとき、単なる「海外シェーパーの来日イベント」を超えた、不思議な縁と大きな意味を感じました。

今回は彼を迎える理由と、僕が思う「日本のサーフボードカルチャーの未来」について少し書き留めておこうと思います。

♦︎サーフボード作りにおける「知られざる分業構造」

知らない方も多いと思いますので簡単に書いておきます。

まず、1本のサーフボードが完成するまでの工程は、大きく2つに分かれます。

①シェープ(削る工程)

フォーム(ブランクス)を削り、ボードのアウトライン、ロッカー(反り)、レールなど「性能と形」を決める設計・造形の工程。

②グラッシング(包む、仕上げる工程)

削り上がったフォームにガラスクロスを巻き、さまざまな技法で着色し、樹脂で固め、サンディング(固めた樹脂を削る)して磨き上げる工程。強度・重さ・防水性・そして美術品のような美しさを決める仕上げの作業。

サーフィングの本場であるアメリカやオーストラリアなどでは、この②を専門に行う「グラスショップ」という独立した専門工場が存在し、「あそこに仕上げを頼めば間違いない」と仕上げの職人や工場自体がひとつのブランドとして評価される文化が根付いています。

海外の巨大なマーケットでは、「削る名人(シェーパー)」と「仕上げる名人(グラッサー)」がお互いの専門性を尊重し合い、分業して高め合う構造が出来上がっているように感じます。

♦︎独立した「仕上げのカルチャー」を根付かせるために

翻って、日本の現状はというと。

日本ではグラッシング専門の独立した拠点が少なく、仕上げの工程が表に出て評価される機会は、まだ限定的です。

海外のような成熟した分業インフラが整っていない環境だからこそ、日本やイギリスといったエリアで本物のクオリティを追及しようとしたとき、ひとつの重要な生き方に行き着きます。

それが「シェープからグラッシングまで、全行程を一人でプロレベルにやり切る”ビルダー”という選択です。

僕自身、そうして全工程に向き合ってきたからこそ、海外のシェーピングと日本のグラッシングがどう噛み合うのか。お互いの技術や美学を高め合いながら1本のボードを作り上げていく、そのプロセス自体が今から楽しみでなりません。

このコラボレーションを通じてシェープだけでなく仕上げの魅力や奥深さも発信していく。それが日本でもグラッシングという仕事がより評価されるきっかけになればと思っています。

♦︎妥協のないモノづくりを体現する、Oleroのクオリティ

今回のお話をいただいてから、SNSや写真を通してJohnの作品を目にしたとき、言葉以上にそのクオリティの高さがまっすぐ伝わってきました。

単に形を削るだけでなく、最後の仕上げに至るまで、極めて精密で妥協のないクオリティを追及する。「デザインから完成まで、全ての工程を自身の技術と美学で完結させる」という彼のスタンスは、同じように全工程を手がけるビルダーとして深く納得できるものでした。

♦︎九州・福岡から、次の世代へ新しい動きを

数年前、ここ糸島にファクトリーを新設したとき、僕の中にひとつの想いがありました。

動画の13:45あたりでもサラッとそんな話をしていたところが映っているのですが、それが今回現実となります。

どうしてもカルチャーの発信は都市圏に偏りがちですが、ここ九州の地からでも本物の渦は作れるはず。

これまで積み上げてきた自分のグラッシングの腕が、世界のトップビルダーと並んだときにどう響き合うのか。職人として自分の現在地を見つめ直す、大きな機会です。

そして何より、このプロジェクトを通じてシェープだけでなく仕上げ(グラッシング)も含めた「サーフボードづくりの奥深さと魅力」をローカルや次の世代にリアルな体験として届けていけることが何より楽しみです。

10月、このファクトリーでどんな化学反応が起きるのか。ぜひ楽しみにしていてください。

Welcome to Fukuoka, John!!

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